第3章|平成の改修時代

堂島ビルヂングの現在と未来

次の100年に向けて、新たな都市の担い手を育む

堂島ビルヂングは、平成の改修後、インターネット時代のオフィスビルとして、着実な歩みを始める。大きく3階から8階まで、Aタイプ、Bタイプ、Cタイプの3種類の間取りを提供し、建設概要に記載されている竣工時のテーマでもある「輕快(けいかい)ナル『ビジネスルーム』」を提供している。

Aタイプは、御堂筋沿いでは希少な小区画賃貸の15坪(約50㎡)。Bタイプは南東の角部屋で、二面彩光の24坪(約79㎡)。Cタイプは、御堂筋沿いの南西の角部屋で会議室やミーティングブースを設けられる43坪(約142㎡)の空間となっている。

コンセント配線の回路分けが可能なほか、タイルカーペットは49色から選択できるため、レイアウトにテナントの特色が出せる。ビル正面玄関は土日祝もオープンし、共有施設として、9階・1階・地下1階には6名~83名用のビル提携会議室7室が設けられ、地下1階には貸倉庫、喫煙室などが設置されている。

昔はビル直営の営繕部(現・施設管理課)がビルのメンテナンス全部を直接行っていたが、現在では常駐している野村建設工業株式会社と連携してサービスを行っている。したがって管理会社に任せるのではなく、空調・電気系統・水廻りなどの日常的なトラブルは、即対応することが可能になっている。しかも、現在ではめずらしい365日、24時間体制の有人警備が行われており、複数名による定期的な巡回がなされている。さらに、新たな設備として、玄関入口にAEDが常備され、防犯カメラによるモニター監視も徹底されている。また、竣工時から存在している郵便局や銀行に加え、ATMが1階にあり、事務処理・会計処理にも利便性が高い。

東側に裁判所があり、法律事務所関係のテナントが多いが、近年は今までにはない業態の会社も入居するようになった。少人数制のIT企業など起業間もない会社も増えており、御堂筋沿いの部屋を借りることで信用を得たいというテナントのニーズを満たしている。

2018(平成30)年からは「生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪(イケフェス大阪)」に参加している。イケフェス大阪は、2014(平成26)年から秋に開催されており、戦前から現在までの名建築を含む、150件以上の建築が公開され、毎年延べ4万人を超える人々が訪れている。

イケフェス大阪では、地下食堂の床に貼られていたものと思われるタイルが公開された。戸張柔道場となった際、上に畳が置かれたため、長い間忘れられていたものだ。同じく竣工以来、現存している金庫室やパイプスペースの写真も公開され、往年の優れた設備が再認識された。

堂島ビルヂングは、令和の時代も、新たな都市の担い手を育むとともに、大正時代から続く「生きた建築」として、大阪の都市文化を継承することだろう。

地下食堂の柱のタイルが残る会議室

地下食堂の柱のタイルが残る会議室

『島民』秋号Vol.131(表紙) 140B、2019(令和元)年 (株)140B提供

『島民』秋号Vol.131(表紙) 140B、2019(令和元)年 (株)140B提供

中之島周辺をテーマにしたフリーペーパー『島民』に、「堂島ビルヂング物語」として特集記事が組まれた。発行元の株式会社140Bは2017(平成29)年から堂島ビルヂングに入居し、「生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪2018」から6階事務所を公開している。

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